家作りのパートナー。ハウスメーカーと工務店、設計事務所の違いは?
注文住宅を新築する際には、家づくりのパートナーとなる住宅会社を選ぶことになりますよね。
住宅会社との付き合いは、設計から竣工までだけではなく、住んだ後もメンテナンスが必要ですから、その家に住む限り続くことになります。
長い付き合いになることがわかると、更に迷ってしまいますよね。
この記事では、家づくりのパートナーの選択肢として一般的である、ハウスメーカーと工務店、設計事務所の違いについてそれぞれの特徴等を解説します。
パートナー選びの予備知識として確認してみてください。
ハウスメーカー、工務店、設計事務所 それぞれの違いや特徴
ハウスメーカー・工務店・設計事務所のそれぞれの違いや特徴を確認してみましょう。
ハウスメーカーとは?
ハウスメーカーの会社形態は実に様々なのですが、あえてひとくくりにすると、規格化された住宅を作る会社のことを言います。
そのほとんどが大手企業なので、会社自体の安定感やブランド志向の高い施主からの支持を集めています。
このブランド力によって、住宅自体の資産価値を高めているケースも見受けられますね。
■ ハウスメーカーの設計・工事
ハウスメーカーの設計担当者は、一般的に1~2回計画地に足を運んで設計を行います。
繁忙期には、営業担当が撮影した写真と、図面を元に設計を行うこともあるので、実際に現場には足を運ばないこともあります。
ですから、その土地に合った住宅かと言うと・・・そこまででもないこともあります。
(素晴らしい住宅も、もちろんたくさんあります。)
規格化された住宅をハウスメーカーとしてくくるのであれば、設計の自由度も比較的低めなのですが、理想の雰囲気に近いものを手がけるハウスメーカーを選び、そこまで凝ったこだわりを要求しなければ設定された規格内で充分満足できることでしょう。
工事の面では、工法が規格化・統一化されているために、現場監督の監理もしやすく、住宅ごとの品質のばらつきが比較的少ないことも特徴です。
現場の管理体制としては、現場監督の管理のもと、一定の基準を満たした下請けの業者が工事を行います。
随時設計担当による、設計監理も行われます。
■ ハウスメーカーの価格
ハウスメーカーの会社形態は様々なので、一概には言えませんが、規格化された資材や工法を用いて、市場を広く展開することで大量生産を実現し、原価の低コスト化を目指しています。
ですから、設定された規格から出れば出るほど価格が上がってしまうことも特徴として挙げられます。
例えば、床材の材質を変更したり、気に入った住設機器の機能が無いのでシリーズを変更したり・・・といったことです。
前にも書いたように、理想の雰囲気に近いものを手がけるハウスメーカーを選ぶことと、強いこだわりを要求しないことで規格からはみ出ることは防げますが、自分たちの環境や趣味に合わせたオリジナルのものを取り入れたい場合はオプション扱いとなり、その場合価格も高くなるので注意が必要です。
又、ハウスメーカーの場合、TVCM等の広告宣伝費や、規模も大きい事から人件費が大幅に掛かっており、その分の費用が住宅の価格に上乗せされている為、価格設定が割高になっていると考えられます。
工務店とは?
工務店とは、地域に根付いた経営をする会社が多く、建設工事に関わる各業者を総括する役割を持った会社のことを言います。
一般家庭のリフォームから法人委託、公共工事等の幅広い建築工事を手がけ、そういった経験で得た技術を住宅建築に活かしている企業もあります。
■ 工務店の設計・工事
工務店の手がける設計は、雨漏り等の瑕疵を出さないために、保守的な提案になる傾向があります。
ですから、目を引くような個性的な住宅にはなりにくいですが、メンテナンスがしやすく、コストも安い住宅ができることでしょう。
とは言いましても、工務店の形態も様々なので中には、設計事務所の住宅施工を行う工務店も存在します。
そんな工務店の場合は、デザイン性の高い納まりにも積極的にチャレンジしてくれる傾向があり、充分デザイン性の高い住宅を望む事もできます。
パートナー選びの際は、過去に手がけた住宅の施工例を入念に確認しておきたいですね。
工務店の現場管理体制は、ハウスメーカーとほぼ同じです。
現場監督が現場を管理し、下請けの業者が工事を行い、設計担当者による設計監理が行われます。
長く地元に根付いた経営をしている工務店の場合、下請けの職人達が互いに仕事の仕上がりを確認しあう様子も見受けられます。そう言った体質から、高い技術力にも期待できますね。
■ 工務店の価格
企業規模の小さい工務店は、会社経営のための諸経費がハウスメーカーよりもずっと少ないため、原価に近い工事費で住宅が建てられるメリットがあります。
また、くせの強い土地(狭小地・傾斜地等)の住宅を試行錯誤して手がけてきた場合も多く、そういった土地への設計・施工も原価に近い価格で工事ができることも強みとして挙げられます。
設計事務所とは?
設計事務所とは、建築の立案・設計・作図・工事監理等の業務を行う建築士や、その事務所の事を言います。
建築士が単独で業務に携る場合や、数名の建築士からなる場合もあり、形態は多様です。
中には建築家と言われる人もいます。
施主の要望に加えて、各建築士のセンスと気遣いから施主に合った住宅を提案してくれます。
■ 設計事務所の設計・工事
ハウスメーカーや工務店に比べて、設計に時間がかけられるため、中には計画地に張り込んで日当たりや騒音、交通量などを観察する設計事務所も存在します。
そこまでしなくても、土地の環境を理解した上で設計に取り掛かりますので、土地のいい所は最大にし、悪いところをカバーできる住宅となることでしょう。
設計の自由度も高く、家作りに強いこだわりや夢を持つ施主の場合、設計事務所と住宅の設計を考える期間はとても楽しいものとなります。
設計事務所が設計した住宅は、一般的に工務店のような施工会社が請け負います。
ハウスメーカーや工務店の場合は同じ会社内の設計監理となるのですが、設計事務所の設計監理は外部からの視点となりますので、比較的厳しく、施主の気持ちに寄り添った設計監理となるのも施主としてはありがたい面でもあります。
■ 設計事務所の価格
設計事務所の設計と聞くと、高級そうなのですが、そうでもない場合があります。
そうでもない場合と言うのは、くせの強い土地(狭小地や傾斜地等)の場合です。
この場合、くせの強い土地では叶えられないような住みやすさを提案してもらえる上に、土地代が抑えられます。
土地代が抑えられない場合は、やはり他の選択肢にくらべて高額になってしまいます。
デザインに配慮された部材や、多くの図面を必要とするため、設計期間も工期も長くなる傾向があります。また、一般的に工事総額の10%の設計監理費が必要となるためです。
ハウスメーカーや工務店の設計と比較すると、とても手厚く拘り抜かれた設計となるため、費用が嵩むことはやむを得ない部分と言えます。
3者それぞれ特徴があるので自分たちに合う会社を見つけたいですね♪
ハウスメーカー、工務店、設計事務所という、現在家作りにおいて主流になっている3つの選択肢のについて解説しました。
それぞれの特徴を確認すると、違いが明確になったのではないでしょうか。
要望と予算、計画地の状況を考慮した上で、理想の住宅を実現してくれるパートナー選びをしたいですね。
執筆者
◆ 執筆者プロフィール ◆
佐藤結伽
2級建築士。
横浜市の総合建設会社にて、主に木造住宅の設計に携わる。
退職後、作図業務等を委託しながら2人娘の育児にも奮闘している。
最近、自邸の建設をし注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。